街角や駅、商業施設など、さまざまな場所で目にするデジタルサイネージ(電子看板)。動画が流れるディスプレイは視線を引きやすく、現代の販促ツールとして注目を集めています。しかし、いざ導入や運用を始めようとすると、「動画制作はコストが高い」「社内に制作スキルがない」といった悩みに直面する企業・店舗も少なくありません。
そんな中、「静止画だけでも十分な訴求効果を得られる」という声が広がり始めています。本コラムでは、静止画の持つ力、動画との違い、静止画活用の戦略を解説していきます。
静止画コンテンツのメリット
イメージとしてなんとなく「動画のほうが広告効果が高い」と考えてしまうデジタルサイネージのコンテンツですが、静止画、動画ともに特徴・メリット・デメリットがあります。
静止画であることのメリットを見てみましょう。
視認性と即時性に優れている
デジタルサイネージは多くの場合、通行人や利用者の「一瞬の視線」を捉える必要があります。静止画は一枚で情報が完結しているため、、見る側が情報を瞬時に理解できるという強みがあります。これは動画にはない大きな利点です。特に人の視認行動は一瞬で判断されるため、動画のように「始まりから終わりまで見ないと意味が通じない」コンテンツは、その途中で離脱されてしまう可能性があります。
また、サイネージが設置されている場所では、必ずしも立ち止まって見てもらえるとは限りません。動線上にあるサイネージでは、歩きながら、あるいは通り過ぎながら見られることを想定する必要があり、その点でも「静止画」は効果的です。
制作・更新が圧倒的に楽
動画は撮影・編集・レンダリングといった工程が必要で、どうしても時間と費用がかかります。一方で静止画は、グラフィックソフトやテンプレートを活用すれば短時間で制作が可能で、、内容の変更や修正も容易です。新メニューや新商品を告知したい場合でも、静止画であれば即日対応も可能です。
さらに、静止画であれば社内スタッフがある程度テンプレートを用いて作成できるため、内製化も進めやすくなります。もちろん、クオリティにこだわるなら外注も有効ですが、いずれにしても動画に比べて圧倒的に負担が軽くなります。
表示デバイスとの親和性が高い
動画は高解像度・高フレームレートを求められるため、再生デバイスにも一定のスペックが必要になります。静止画は軽量で、、どんなモニターや再生機器でも安定して表示できる点で優れています。これは電力消費の観点からも見逃せません。長時間運用するサイネージでは、静止画の方が電力効率もよく、コスト削減にもつながります。
面で記憶してもらいやすい
静止画はスライドでもそのまま数秒固定された状態になるので、短時間でも内容を認識されやすいというメリットがあります。目に入ったものが絵として刻まれるというイメージです。
動画はシーンが繋がってようやく一つの広告になります。つまり通行人が一瞬見たものが完成形である可能性は極めて低いです。
一方で静止画は序章もクライマックスもなく完成している状態で表示され続けますから、どのタイミングで目に入っても構成さえ良ければ記憶してもらいやすいです。
なぜ「動画」でなくても効果があるのか?
まず、動画は動くメディア媒体であるということを心得ておきましょう。これはメリットでもありデメリットでもあります。後に説明しますが、デジタルサイネージにおいて動画と静止画のどちらが効果的かは、目的や設置場所、ターゲット層によって異なります。
ウェブ上の広告で動画と静止画を比較した調査・研究結果の多くは、「動画広告は静止画広告と比較して約1.5倍のエンゲージメント率を記録」「Meta広告におけるABテストでは、動画バナーのCTRは静止画バナーの約6倍という結果が」のように動画広告に軍配が上がります。見続けられる環境なわけですから当然の結果と言えるでしょう。
では、デジタルサイネージのように「誰でも通行可能な場所」で「対象者が動いて(歩いて)いる」というような環境だとどのような結果になるのでしょう。
注目度が高かったのは静止画サイネージ
「デジタルサイネージコンテンツの提示方法の違いが行動に及ぼす影響」(佐藤翔一(2022).東京都市大学)という、デジタルサイネージに限定して東京駅で組織的観察を行った結果をまとめた論文があります。屋外の人が通行している場所で行った観察を分析した資料はほぼ見つからないため貴重なデータといえます。

「コンテンツの動きの有無」という、静止画と動画に分けて比較・観察したデータを分析した結果によると、仮説に反して多少とも注目された割合(「チラ見」~「足を止めて視聴」までの合計)は静止画のほうが高く、統計的にも有意な差が見られたとしています。
考察では、静止画に天気予報など更新頻度の高い情報が含まれていたことも影響している可能性も示唆されていますが、統計学としても十分な環境下での観察であり、「動画最強説」には思い込みも紛れている可能性を示しているといえるのではないでしょうか。
もちろん環境や表示内容などで逆転する可能性もありますので「静止画のほうが注目度が高い」とまでは言い切れませんが、静止画でも十分に効果があるとは言ってもよいのではないでしょうか。
動画に頼らなくても目を引けるデザイン構成
多くの人が「動きがないと目立たないのでは?」と感じますが、実はそうではありません。。色彩設計、構図、タイポグラフィの工夫によって、静止画でも十分に注意を引くことができます。文字とビジュアルのコントラストを強める、訴求ポイントを絞る、視線誘導のデザインを採用するなど、静止画だからこそできる戦略的な設計があります。
例として実際、店舗前に設置されたディスプレイに「本日限定!生ビール半額」と大きく記された静止画を表示したケースでは、動画を流していた時よりも入店率が高まったという事例もあります。人は一目で理解できる情報に安心感を覚え、反応しやすいのです。
音声が使えない環境が多い
商業施設や駅構内など、多くの場所ではサイネージに音声を使うことができません。そのため、音声に頼る演出ができず、動画でも静止映像と同様に「文字とビジュアル」で伝える必要があります。この点でも、静止画が本質的な伝達手段となっていることが分かります。
たとえば、ナレーションや音楽によって世界観を伝えようとする動画は、無音ではその価値が半減してしまいます。それに対し、静止画は最初から視覚情報のみで完結するよう設計されているため、情報の抜けが発生しません。
時間の制約を受けにくい
サイネージの表示サイクルは、15秒、30秒など短いケースが一般的です。動画だと「最後まで見せる」工夫が必要ですが、静止画であればどのタイミングでも全情報が見えるため、スムーズに伝達ができます。これは特に、複数のサイネージを切り替えながら情報を見せていく運用スタイルにおいて非常に有利です。
また、「デジタルサイネージ白書2013(デジタルサイネージコンソーシアム編)」によると、店舗内環境では静止画より動画のほうが商品消費割合が高かったものの、15秒の動画では40%前後だったものが5秒に変更したあとは50%に達したとの報告もあります。
長ければ良いというものでもなく短いほうが受け入れられるとすれば、動かない静止画としてひとまとめになった情報がケースによっては優位になることが十分に考えられます。
動画が効果的なケースとは?
もちろん、すべてのシーンで静止画が最適というわけではありません。動画が真価を発揮するシーンも存在します。以下にその代表例を紹介します。
ブランディングや世界観の表現に強い
ブランドイメージや企業のビジョン、商品のストーリーを伝えるには、動画が非常に効果的です。音楽やナレーション、動きによって感情に訴える演出ができるため、世界観を感じさせる演出には動画が最適です。特に以下のようなケースでは効果的です:
- ファッションブランドのブランドムービー
- 高級車や不動産のプロモーション
- 新商品やリニューアル発表時のイメージ演出
SNSやWebでの拡散力を活かす場合
InstagramやYouTube、TikTokなど動画に親和性の高いプラットフォームでは、動画の方が反応率が高まる傾向にあります。特に短尺動画(リール・ショート)との相性がよく、視聴完了率が高い場合はブランディングにも有効です。
デモンストレーションや使い方の説明
商品の使用方法や特徴を伝えるには、動画での説明が適しています。例えば以下のような用途です:
- 美容家電の使い方紹介
- アプリやツールの操作解説
- 飲食店での調理風景の紹介
動画の注意点
ただし、動画は一度作ったら簡単には修正できません。定期的な情報更新や価格変更が発生する業種では、動画の更新コストとスピードがネックになる可能性があります。その点を踏まえたうえで、「静止画」と「動画」を目的によって使い分ける判断力が重要です。
静止画デザインの戦略的活用法
静止画デザインでデジタルサイネージのコンテンツを作成するとなった場合、どのような視点で、どのように活用していくと効果的なのでしょうか。
ターゲット別にカスタマイズする
静止画デザインは、対象とする客層によって工夫すべきポイントが変わります。
たとえば小児科クリニックでは、やさしい色合いと動物キャラクターの静止画が来院者の安心感を生み出す要素になります。
- 高齢者向け:大きな文字、シンプルな配色、写真多め
- 若者向け:ポップな色彩、トレンド感のあるフォント、インスタ風デザイン
- ファミリー層向け:親しみやすいイラスト、キャラクターの使用、柔らかな配色

見る場所・時間帯を意識した構成
例えば朝の駅では「通勤向けの簡潔なメッセージ」、昼間のショッピングモールでは「滞在時間が長いため詳細な情報」など、状況に応じて最適な情報量とデザインを調整することが重要です。
季節感・イベント性を取り入れる
月ごとのイベントや四季に合わせた静止画を用意すれば、、飽きられずに注目され続けるコンテンツ運用が可能です。クリスマス、お正月、バレンタイン、春の新生活、梅雨の時期、夏祭り、ハロウィンなど、イベントに応じたデザイン展開は年間販促計画にも組み込みやすく、効果的です。
動画との比較:コストと運用面から考える
項目 | 静止画 | 動画 |
---|---|---|
制作コスト | 安価(数千円〜) | 高価(数万円〜数十万円) |
制作時間 | 数時間〜1日 | 数日〜数週間 |
修正対応 | 簡単 | 手間がかかる |
ファイル容量 | 軽い | 重い |
機材・人材 | 最小限でOK | 専門人材が必要 |
定額デザインサービス「助太刀丸」の活用例
PRになってしまいますが、デジタルサイネージのコンテンツに静止画(画像)を積極的に活用していくならデザイン定額サービスの活用もおすすめです。頻繁に更新していくのであれば月額3万円でリーズナブルに活用できる「月極デザイン 助太刀丸」をご検討ください。
月額制だから、何度でも依頼できる安心感
助太刀丸では、、月額定額制で必要な静止画コンテンツを無制限に依頼可能です。「キャンペーンごとに都度依頼するのが面倒」「デザイナーに相談する余裕がない」といった悩みを一気に解決します。定期的な更新、季節のキャンペーン、急な値下げ告知など、あらゆるタイミングで活用いただけます。
リーズナブルにクオリティの高い画像を外注できるのも安心です。
デザインの一貫性を保てる
ロゴやカラー、フォントなど、企業ごとのガイドラインに沿った静止画を毎回制作できるため、ブランドイメージがぶれず、長期的な認知度アップにもつながります。
また、担当者を固定していることも一貫性を保てる要素のひとつです。
チラシ・SNS投稿との連携も
サイネージだけでなく、チラシやWebバナー、SNS用画像など他メディアとの連動デザインも可能。これにより「一つのデザインが複数媒体で使い回せる」効率的な販促が実現します。
例えば最初にチラシを作成し、それをもとに統一感あるデジタルサイネージのコンテンツやバナーを制作することが可能です。
まとめ:静止画で伝える時代へ
現代は、動画が溢れるあまり「動かない=逆に目立つ」という現象すら起きています。静止画はシンプルながら、伝える力・記憶に残る力において、決して動画に劣るものではありません。特に情報伝達を重視するサイネージにおいて、静止画は実用的かつ戦略的な選択肢です。
・デジタルサイネージには静止画でも十分な訴求力がある
・静止画の方が制作・運用コストが安く、更新も容易
・見せ方を工夫すれば、静止画でも強い印象を残せる
無理に動画にこだわらず、「必要な情報を、必要な形で届ける」静止画の可能性に目を向けてみませんか?